まい子と鍵谷くんの初心さに高校時代に置いてきたキュンの気持ちが甦る。劣等感、理想、偏見、嫉妬、羨望、トラウマ、自己嫌悪…社会生活で抱えるぐちゃっとした感情に焦点を当てた作品だが、シリアスに寄りすぎることも無く柔らかな作風で読みやすい。
全人類を納得させる万能な答えは無いと思ってるから、着地のさせ方が「こうあるべき」ではなく、「こういう形もある」だったのも自分的に凄く心地よかった。登場人物が完璧ではなく何かしら欠点があるところも好き。活き活きしてみえるというか、過ちを入れる事で彼らの営為に説得力が増すなという印象。
フィクションは読者の共感次第で売れ行きが決まると思っているため、現代社会で関心の高い問題を扱う漫画で彼らの嫌な部分を敢えて取り入れるのは勇気がいると思うのだが、センシティブな問題を扱うからこそクリーンな人間より良い所も悪い所もある等身大の人間が必要だったように感じた。
あと、対話が重視されていて良い!すれ違いって大抵コミュニケーション不足のせいなので。今そのコミュニケーション不足で絶賛すれ違い中のカップルが居ますが、配慮の加減がお互い下手くそなんだから、対話を、しなさい。