おんJ艦これ部Zawazawa支部

おんJ艦これ部町内会 / 97

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名無しのおんこれ部員@Zawazawa 2016/10/13 (木) 23:22:47 8f50c@1c7c0

 ある晩の夜遅く、旦那が飛龍から送られた封筒の中身をまじまじと見ていた。娘が二人、食いついてみている。旦那は台本の写しらしきものをソファーに置くとこうつぶやいた。
「いやー、参ったな。」
「貴方、どうしたのかしら?」
「中身は申し分ないんだ。もう少し煮詰まれば完成するぐらいの、な。ただ、この素晴らしい脚本家に報酬が渡せないかもしれない。」
 報酬。仕事の見返りとして当然あるべきものだ。しかし、それが渡せないかもしれないというのだ。伯爵は話を続ける。
「Wolke Drachen、彼女がこの作者なのだが、いかんせん連絡先も何も書いていないんだ。まぁ、飛龍を通せということかもしれんが。」
「ゔぉるけ・どらっひぇん?」
「うむ、Wolke Drachen、雲の龍とという意味だ。つまりだ……ペンネームと言いつつも雲龍だろうな。」
「艦娘さんでしたか。」
「ああ、そういうことだ。」

旦那はおもむろにBlackBerryを取り出して飛龍の番号をプッシュした。
『Guten Abend. Aleksandr Shmidt……もといGraf Zeppelinだ。』
『はい、飛龍です。』
『届いた脚本を拝見した。中身は素晴らしい出来だ。是非ともそれで取り掛かりたいと思う。』
『お、いい感じですか?』
『うむ。ところでだな、飛龍。執筆者のWolke Drachenと連絡は取れるか?』
『うーん……今のところ知り合いの知り合いといったところですね。』
『そうか。お願いだが飛龍自身か出版社を通して直接コンタクトを取ってほしい。諸々の連絡のみならず最終的には報酬も渡さないといけないからな。』
『そうですね……。取ってみます。』
『ああ、切実な問題だ、よろしく頼む。で、次だが。』
 グラーフは少し深呼吸した。
『もう一人脚本家を紹介しただろう?確かその家族も出演すると聞いている。』
『ええ、確か村雨さん家族のところです。』
『そうだな。出演者全員、それにWolke Drachenにもう一人の脚本家、みんなを交えて一度打ち合わせをしていろいろと決めたいと思っている。まだ顔合わせもしていないからな。是非ともスケジュール調整をお願いしたいが、問題ないか?』
『承知しました!』
『あと、Wolke Drachenに伝言だ。』
『何でしょうか?』
『赤が多すぎて読みにくい。きっと寝不足だろう。これからいろいろと打ち合わせがあるから休息はしっかりと取ってほしいということ、だ。』
『はいよ!ではまたよろしく、Alex.』

 通話を終えた旦那はソファーに体を埋めて伸びをしていた。
 そっと机に好物のグミを置いておく。夜遅くまで台本を見つめる旦那を見守りながら、今日も私はベッドに転がった。

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