おんJ艦これ部Zawazawa支部

おんJ艦これ部町内会 / 77

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お酒作り 2016/09/26 (月) 00:03:50 29bdb@bf5b8

「ただいま」
「あなた、帰ったわよ!」
栗のクリームを出来上がったスポンジへと綺麗に飾り付け、天城特製のモンブランが出来た頃。
もう一人の妹が今日の主役を連れてきた。
「すごい!天城姉え、これ天城姉えが作ったの!?」
「ええ、提督に皮剥きを手伝って頂いて……」
玄関から走って玄関までやって来たのは、憧れの瑞鶴を追って国際線のCAになった葛城。
仕事の様子を時折聞くが、クールに何事もこなしているらしい。広報のグラーフも太鼓判を押すレベルと言うから、相当頑張っていると思う。
鎮守府にいた頃は覗いてしまったり、身体が触れ合っただけで艦載機を放っていた彼女がCAとして活躍しているとは、まさに驚きの一言だ。
しかし目の前でモンブランで浮かれて飛び跳ねている姿は昔と変わらないように見える。
ただ今日は仕方ない。今日は大切な日だから。

「良い香りがするわ、どうしたのあなた?」
鼻をクンクンと鳴らして台所へやって来たのは僕の妻、そして今日の主役の雲龍。
「良い栗を山雲が見つけてきたから夕食にしようと思ってさ」
「良くやったわね、山雲」
「わーい!」
雲龍に頭を撫でられる山雲は嬉しそうにはしゃぐ。手のひらは山雲の頭を優しく包むように動いていた。そして僕はそんな姿を見て続ける。
「それに、今日9月25日は雲龍の進水日だ」
「……覚えてくれていたの?」
山雲を撫でる手が止まった。そして僕の顔をジーッと見つめる。
「覚えているさ。 大切な日だから、忘れられないよ」
「……そう」
「お母さんー?」
目を伏せて顔を下に向けた雲龍。
そして山雲にも自分の顔見せないように手で顔を隠した。
「……みんな、ありがとう」
絞るように小さな声でお礼を言う。チラッと見える耳は真っ赤だ。

しばらく沈黙が流れたがみんな笑った。

「ありがとうは私もですよ、雲龍姉様」
「その通り!雲龍姉えがいるから私達も生まれてこれたんだから!」
「「だから、これからも良いお姉さんで居てね」」
天城と葛城、二人の妹から。
「山雲もー素敵なお母さんでいてほしいなー」
山雲、娘から。
「雲龍のために頑張るから、これからも末永くお願いします」
そして僕から。

美味しい香り、少しの照れと優しさが隠し味の愛情が混ざった秋の味覚。
みんなにとって大事な彼女の進水日、今日をきっと彼女は思い出として残ってくれるだろう。
そんな9月25日の夕方でした。

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