おんJ艦これ部Zawazawa支部

おんJ艦これ部町内会 / 76

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お酒作り 2016/09/26 (月) 00:03:10 29bdb@bf5b8

9月も終わりに差し掛かる。
蝉たちの賑やかな鳴き声から鈴虫や蟋蟀の音色に変わり、まさに本格的な秋になったと思う今日この頃。
僕の酒蔵では酒の素となる生酛(きもと)作りが今年も行われ、いよいよお酒の季節が始まった。

だが今日はそんなお酒作りは少しスローダウン。
だって9月25日は……。

「お父さんー? 栗拾って来たわー」
お昼を少し過ぎた頃に娘の山雲がのほほんとした声で家へと帰ってきた。
手に持っている籠の中にはたくさんの栗。
「あっちの山はー栗でー、こっちの山はー柿とアケビが色づいてたわー」
僕よりもここら辺を知り尽くしている山雲は山の生き字引と言っても過言ではないほど。僕の方が子供の頃から長く暮らしているはずなのに、山雲の知識には舌を巻いてしまう。
「山雲ちゃんすごいですね。 こんなにあるなんて……」
「そうでしょー山雲を褒めてねー天城さんー」
おっと、今日は助っ人に来てもらって居たのを忘れていた。
都会の方でパティスリーを開いた天城が我が家へやってきてくれている。
理由はもちろん大切な日を祝うため。
「これだけありますから、モンブランケーキだけだと余ってしまいますね」
「マロングラッセとかは作れないか?」
「グラッセだと、しっかり甘くするために時間がかかっちゃいますね。 2日くらいは時間がないと……」
「そうか……」
お店で並んでいる栗のお菓子と言えば、モンブランケーキとマロングラッセだと考えていただけに、マロングラッセが簡単に作れないとは想像もしていなかった。我ながらこういうところでも無知をひけらかしてしまい恥ずかしい。
栗から出来る甘いもので頭を回して考えていたが、天城が思いついたように口を開く。
「せっかくですし、シンプルに栗ご飯はいかがでしょうか?」
「栗ご飯か」
「はい。 甘い物ばかりよりシンプルなものを好むと思いますし……」
これは妙案。そうだな秋の味覚を無理に凝ったものを作る必要はないのだ。
きっと彼女もそっちの方を喜んでくれるだろう。
「じゃあ皮は僕が剥くから、天城はモンブランの下ごしらえを頼んだ」
「わかりました!」
「山雲はー?」
「山雲はお米を研いでもらおうかな」
「はーい」

悪戦苦闘。栗の鬼皮は硬いし、中の渋皮は削れてしまいそうな程だし……。栗はあのイガイガよりも本体の方が厄介極まりない。

生の状態のまま指にタコが出来るレベルで皮を剥いていたが、下ごしらえを終えた天城が裏技を教えてくれた。

栗の尖っている方に十字型の切れ込み1~2cmを入れる。そして圧力鍋に栗がかぶるくらいの量の水を入れ、点火して加圧し、5~7分ほどで火を止めて鍋に水をかけ急速減圧する。
圧力鍋を使った裏技だが、これがすごい。
外の鬼皮だけでなく、中の渋皮まで簡単に向けてしまった。
「お店の方でも栗のケーキは大人気なので、色々と調べてみたんです」
最初はタコだらけだったんですと恥ずかしがりながら笑う天城。
真面目な性格で頑張り屋な一面を持つ彼女らしい。
そういえば鎮守府で出してくれたカレー丼にも出汁や片栗粉を入れることで美味しいものを作ってくれたっけ。

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