「問題三、僕」
「なにかあるの?問題」
「……担当編集として言いたくないんだけど、集客力が足りない」
「……はい」
「なぁに?あなた、結構人気あるんじゃないの?……私、パートとかした方がいい?」
「ううん!大丈夫、大丈夫。ちゃんとわがレーベルの稼ぎ頭……中堅…えぇと…」
「気を遣わないでいいよ。大作家じゃないのは、ちゃんと自覚してます」
「あんまり卑下しない。ちゃんと一家養えてるじゃない」
「えぇ、おかげさまで」
「それにしても、たまに講演もイベントもしてるじゃない」
「『スポンサー付きの企画に彼の集客力だけでは採算が合わない』……と、部長が」
「何よ、失礼しちゃう」
「まぁまぁ」
「……なぁに?にやついちゃって」
「怒った顔もかわいいなぁ、と」
「……えへ~」
「うんうん」
「……ツヅキイッテモイイ?」
「「アッハイ」」
「第四の問題。これが最大なんだけど」
「……『朝霜たちを参加させる』だって。部長サマも偉そうなことを言いやがる……」
「ここをねー、ずっと苦い顔で考えてて…」
「わが夫ながら、過保護なパパだものねぇ…」
「ウォースパイト呼ぶって話がいつの間にかね。ちなみに企画部は親子関係知らないの」
「だから、教育上の都合でとか言えないんだよね……くっそ…三人を客寄せパンダかなんかみたいに扱いやがって…」
「なるほど」
「イベント自体、そんなに長く大きくやるものじゃないし。集客の
「滅多に出来ることじゃないし、いいんじゃない?やらせてあげなよ」
「……いや、僕としてもいろんな経験させてあげたいんだ…けど、役じゃなくて人として人前に立つのはやっぱ大変だし…」
「あなたって本当に心配性ねぇ…」
「これで時々ネジが外れて動き出すから、ね。日頃の奥様のご苦労、お察しします」
「いえいえ。今度女子会しましょ」
「ねぇ、あなた。あなたがいろいろ心配するのもわかるよ?」
「……考えすぎかな」
村雨ちゃんは、優しい目で語り掛けてくれる。
「ううん、それ自体悪いとは言わない。おかげで私たちは生きてるもの」
お衣は紅茶を静かに飲んでいる。
「でも、今は失敗したら沈む任務じゃないんだし。本人たちに決めてもらうべきじゃない?」
「……そうだね。あの子たちも、一人前の役者だからね」
穏やかな滴が、心を洗っていく。
「……私、結構前にそう言ったんだけど」
「あ、りゃりゃ…」
お衣がちょっと拗ねてしまったのにも気づけないほど、こじらせていたらしい。我が悪癖に根気強く付き合ってくれた彼女を労って、娘たちの……否、女優たちの帰りを待とう。