お酒作り
2016/11/28 (月) 23:54:24
29bdb@ac0ba
「叱ってしまって、ごめんなさい」
稽古帰りの車中。
学校から直行で稽古に臨んだからか疲れている山雲は後部座席でグッスリ夢の中な、今。
助手席で呟くように雲龍は僕に声をかけてきた。
「ん、さっきの? 裏方としてやるべき事をして無かったのだから当然の指導でしょう」
「気にしてないの?」
「家内の情熱に答えるのが旦那さんのお努めだからさ」
「そう……」
嘘ではない本心。
ペンを握り、物静かにひっそりと原稿用紙に様々な世界を作る彼女。
そんな彼女が舞台に世界を作ろうというのだ、応援しない訳にはいくまい。
旦那として責任重大。
「演劇とか興味あったの?」
「ううん、見せたい人がいるから」
「この劇を?」
「そうよ。 帰ってくるじゃない、私たちの家族が」
「……そっか、もうすぐ帰国か」
栗色のツインテール、勝ち気な性格に似合った釣り目、強い自信のある娘。
山雲が温厚なポニーだとするなら、彼女はじゃじゃ馬か。
学校の制度を使ってアメリカに留学して勉強している彼女。
そして何より僕ら夫妻にとって自慢な娘。
「山雲もすごいのよ、『できる姿を見せるんだからー』って」
「今の山雲を見たら、驚くだろうなぁ」
「そうね」
「「朝雲は」」
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