劇の稽古。
どう演じるか、どう魅せるか、子供たちを筆頭に役者として考えて動く。
裏方である事を分かっていながら、ヒシヒシと伝わる緊張感にドキドキしながら見ていた。
「ライト、しっかり睦月さんを照らして」
「ごめんなさい!」
その風景に見とれていたら脚本家、僕の妻の雲龍に怒られた。
意外と言ってはなんだが、あの雲龍が席から真剣な眼差しで見て、役者ひとりひとりの動き方について指導している。
指導する度に、厳しく凛とした響く声を出していた。
(雲龍も出れば良かったんじゃないだろうか)
あまり大声を出すタイプでは無いので、声にも驚いたがここまで堂々としている様には感心すらしてしまう。
グラーフ・ツェペリンの奥さんや村雨さんの旦那さんとも話をして、脚本の手直しをして生かしている。
飛龍曰く『作る作品に本気なところが良いところ』と言っていたが、彼女の情熱は人見知りすら超えるようだ。
「次は朝霜さんの動きに合わせて照明を当てて」
「はい!」
すっかり手足のように使われている僕。
タンクを混ぜるのに櫂を用いているがそれよりも疲れる。
これは明日の朝には筋肉痛か……。
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