おんJ艦これ部Zawazawa支部

おんJ艦これ部町内会 / 157

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村雨の夫 2016/11/22 (火) 23:58:53 5c457@a727d

いい夫婦の日。およびいいツインテールの日。
とは言っても11月。結婚記念日、正確にはプロポーズ記念日があり、海風ちゃん、江風、鳳翔さんにウォースパイトと誕生日ラッシュがある11月だ。どれだけ工夫しても出費は大変なことになる。
そんな月の下旬なので、特別に何か贈りあったりイベントを設けたりはしない、できない。クリスマスと年末年始の予算がなくなってしまう。
だから、娘たちもツインテールにして、晩御飯をちょっといいものにして、あとはいつも通り。

そのはずだったんだけども。
「……こんばんは」
「あり、山風さん?」
「こんばんはぁ。どしたの?」
「ちょっとね。パパとママ、いる?」
日も沈み、夜の帳が落ちる前。珍しいお客が来るもので。

「…これ。結婚記念日とか、いい夫婦とかの…お祝い」
「あら、みんなからかしら。有難うね」
「……ううん。ちがう。あたしから」
「…おぉ!」
「じゃ、帰るね」
驚いた隙をつくのは、不器用な彼女の器用なところ。
それを見逃さないのが、娘たちの怖いところ。
「もう帰るの…?」
「ちょっとだけ!な?」
「あたし、そういうつもりは…」
「ふぇ…」
「……うぅ」
不器用な彼女の、優しいところ。

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  • 158
    村雨の夫 2016/11/22 (火) 23:59:46 5c457@a727d >> 157

    結局、そのまま夜は更けてしまった。
    日付が日付なだけに、二人が寝付いてからでも帰ろうとする山風ちゃんを引き留めたのは、今度は僕ら。
    もちろん、義姉さんたちへの連絡は済んでいる。
    「山風ちゃん、今日はありがとうね」
    「ほんと、嬉しかったわ」
    「…どういたしまして」
    「いつものだけど、グラスが違うと雰囲気変わるねぇ」
    「なんだかゆったりした感じよね。うふふ」
    普段からあまり積極的ではない山風ちゃん。
    そんな彼女とせっかく話しのできる機会。逃すわけにはいかないし、せっかくならと贈ってくれたプレゼントであるワイングラスを使っている。
    「それにしても、木製ときたか」
    「…あの子たちもまだ小さいから、割れるとまずいかなって」
    「ん、そーねぇ。ありがとね」
    持った感触も違えば、口につける感触も変わる。然るべくして味の感じ方も変わってくる。少し厚く、重みを感じるけれど、これは安定と表現するべきだろう。ゆっくり味わうのにちょうどいい。
    娘たちへの気遣いも含めてだけど、彼女の中の優しさが表れた逸品だ。
    「…二人には」
    「んー?」
    「お世話になったけど。ちゃんとお礼、出来てない気がして」
    「そんなことないわよぉ」
    「あるの、村雨姉。……だから、ちゃんとあたしから、お礼したくて」
    「…そっか」
    もしかしたら、何かのお祝いをいつも姉妹連名でしてきたのを気にしてたのかもしれない。そこに不満も不義理も感じないけれど、否定はせずに受け取っておこう。こういうのは本人のけじめだし。
    「ありがとね、山風」
    「ありがと、山風ちゃん」
    「…こちらこそ」
    誰ともなく杯を掲げて、もう一度静かに乾杯。
    「それにしてもいいセンスだよね。気に入ったよ」
    「そうだ、これで日本酒もいいんじゃない?」
    「…?日本酒も飲むの?意外…」

    明日は祝日。娘は早起き。きっと朝からてんやわんや。
    ほどほどにしないといけないけれど、そういうわけにもいかなそう。