おんJ艦これ部Zawazawa支部

おんJ艦これ部町内会 / 111

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お酒作り 2016/10/24 (月) 08:21:12 29bdb@b3a3b

ピロロロロロ……
僕の携帯電話からデフォルトの着信音が響く。
お、来た来た。
それを持つと緑色の通話のボタンを押して耳へつけた。
「終わったわ、そこで待ってて」
「分かった、気をつけて」
「ええ」
思ったとおり、電話の主は雲龍からだった。
声のトーンは平坦。
それをどう判断していいのか悩むが、きっと悪い事は無かったんだろうなと僕には思える。
根拠は無い、ただの勘ではあるけれど。
駐車場に止めた自動車の中。
僕は大人しく待つことにした、妻の言う通りに。

「ただいま」
「お疲れさまでした」
電話に出てから5分後くらいだろうか、緊張したからなのか表情が暗い妻がドアを開けて助手席に乗り込んで来る。
席につくとおもむろに日曜夕方のアニメに出てくるであろうかけていたグルグル眼鏡を外した。
「いかがでしたか、ヴォルケ先生?」
「……その呼び方はダメ」
僕なりにリラックスさせるためのジョークで言った名前は恥ずかしいのか一蹴され、少し睨まれた。
僕からしたらとてもかっこいいと思うけどなあ。
親しい人にはそういった芸名では呼ばれたくないのだろうか。
「やっぱり緊張してたみたいだね」
「……分かるの?」
「そりゃそれだけ額に冷や汗を浮かべてればね、ほら拭いてあげるから」
嫁の額には雫が浮かんでおり、相当緊張していた様子が容易に想像できる。
ハンドタオルで額を吹くとフワッと香水の香りがした。普段香水なんて全く付けないのに気合入れたんだなあ。
ほんのり甘い感じのするこの香りはジャスミンだったっけ。僕の好きな香りだ。

さて、某出版社の駐車場から僕の車は天城のパティスリーへと向かう。
まっすぐ家に帰りたかったがお店には山雲がいるからそのお迎えがあるのだ。
以前、妻と二人で話し合いも兼ねて天城のパティスリーに行ったことを山雲に話したら、『ずるいわー』と怒られた。
なのでその穴埋めではないが、天城のお店のケーキを食べて待ってていいよと約束したのだ。
店に着き、たくさんのケーキがところ狭しと並んでいるガラスケースを見つけると山雲は目を輝かせていた。
女の子は老若問わず甘いものが好きなのだと、改めて知ることになるとは。

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