先ほど言っていた、1+1=2 の証明についてです。
興味ある方読んでみてください笑笑
以下コピペ。
(1) まず最初に、「何の証明も要らずに事実として使えることがら」を決めます (「公理」と言います。) 公理は無前提の定義なので、証明せずとも成り立ってしまっているものです。ただし、唯一絶対の公理というものは無くて、自分の好きなように決めて構いません。ですが一般的な公理でないものを使う場合は、そのことをあらかじめはっきり言っておく必要があります。
(2) つぎに、「こういうことが言えたなら、こういうことが言える」というルールを決めます (「推論規則」と言います)。代表的なものとして、「AならばB」かつ「BならばC」ならば「AならばC」と言える (いわゆる三段論法) があります。この推論規則も、唯一絶対の規則というのはなくて、いろいろな選び方があります。例えば「『Aの否定』の否定」は「A」である、という規則を認める場合と、認めない場合があります。これまた、一般的でない推論規則を使うなら、あらかじめはっきり言っておく必要があります。
(3) 真か偽かで答えられる文 (「命題」と言います) を持ってきて、公理から出発して推論規則をひとつづつ当てはめてゆくことで、命題にまでたどり着けたら、それを「証明」と言います。
さて、「1+1=2」の証明ですが、まず公理系を決めないとなりません。何の断りもなくぽんとこういう問題を出されたら、普通は「自然数の公理系」を考えると思います。
まず、自然数とは何か、の定義です。以下の性質を満たすものを自然数と呼ぶことにします。
(a) 0は自然数である
(b) 自然数nが存在すると、その「次の数」succ(n)が存在し、それもまた自然数である。
(c) 0はどんな自然数の「次の数」でもない。
(d) 自然数a, bがa≠bであるとき、succ(a)≠succ(b)である。
(e) ある命題が0について成り立ち、また「その命題がnについて成り立つならば、その命題はsucc(n)についても成り立つ」ならば、その命題は全ての自然数について成り立つ。
つまり、自然数とは0, succ(0), succ(succ(0)), succ(succ(succ(succ(...(0)....)))) などの集まりになります。ただ、いちいちsucc succと書くのは面倒なので、いくつか名前をつけておきます。
(f) succ(0)を1と呼ぶ
(g) succ(1)を2と呼ぶ
これらは単に名前をつけただけで、計算しているのではないことに注意してください。
つぎに、足し算+を定義します。
(h) n + 1 = succ(n) である。
(i) succ(n + m) = n + succ(m) である。
このルールを満たすものを足し算と呼ぼう、というわけです。このルールと、自然数の定義から、交換法則や分配法則は導けます。
ここまで、succ(n)が具体的に何か、とか、足し算の意味は何か、といったことを一切扱っていないことに注意してください。どういう意味づけをするかにかかわらず、こういう公理系というルールの上で考えましょう、ということです。
おっと、「等しい」について何も言っていませんでした。ちょっと逆戻りしますが、等しさについて次の性質を認めます。
(j) a = b かつ b = c ならば a = c
(k) a ≠ b かつ b = c ならば a ≠ c
(l) 常に、a = b か a ≠ b のどちらか一方のみが成り立つ
では1 + 1 = 2を証明します。
(h)から、1 + 1 = succ(1)
(f)から、succ(1) = 2
(j)から、1 + 1 = 2 (証明終)
もしこの証明にmoonwolfさんが納得できないのであれば、次のどれでしょう。
(A) 足し算の定義に納得いかない。
(B) 自然数の定義に納得いかない。
(C) 等しさの定義に納得いかない。
(C) 「公理と推論規則から命題を導くことを証明という」という定義が納得いかない。
前にも言ったように、定義というのは自分の好きなように決めて構いません。なので、今ある定義に納得がいかないから新しい定義を作る、というのはOKです。でも、何も言わずに始めたらみんなは「普通の定義を使っているだろう」と思うので、途中で「納得いかないから変える」と言い出すのは無しです。納得いかない、変えたいのであれば、最初に「ここでは私は足し算をこう定義する」「自然数をこう定義する」と断ってから、「この公理系で 1+1=2を証明してください」などと言ってください。それが最低限の礼儀です。
もちろん、1+1の答えは、どういう定義を採用するかによって異なってきます。ブール代数の世界では 1+1=1 でおかしなことは無いですし、「2を法とする剰余系」では 1+1=0 になります。上の証明を見て、「いや私の考えていた定義は普通の定義じゃなくてこれなんだ、だから上の証明はおかしい」などと後から言い出すのは無しですよ。定義が違えば答えが違うのは当然なんですから。
証明しようとすると、こんなことになるの!?
そもそもが「自然数の公理系」というものを植え付けられてたんだな、自分のアタマは…。
「1+1」は、それ自体が重厚なアートであり、哲学なんですね。
数は連続するもの、
0に1を足すと1になり、1に1を足すと2になり、2に1を足すと3になり……的なことを定義するのにこんな大変なことになってるのかな、と推測しています。。
でも定義(i)のあたりでもっとなんとかならんかな、と不平が湧き出た笑。
それこそ、もっと美しく定義できそうな気がする……