これを観察した結果を所懐しよう。
これの容貌は、まるで黒い狼を三頭ごちゃごちゃと繋いだものである様に見える。いや、口はそれよりも多いので、もしかすると三つ以上しれないか。
それらの頭には、誰であるかも分からない程に黒く焦げた人間の姿かたちがある。あれほど燃えているのならば姿かたちを維持できずに灰になって崩壊してしまいそうだが、それは丈夫であるようで筋肉の動く様が稀に見えた。
そして彼らの身体には囚人に刺す杭の様に木製の電信柱がいくつも刺さっている。電線も数多く架かっていた。
稀にそこに電気が流れている様ではあるのだが、どうやって電気を流しているのだろうか。当職には見当が付きかねる。
報告はイサンより。以上。

これと戦闘を行う機会があったので、述懐する。
それはまるで何かに取り憑かれたかのように、私に押し掛けてきた。それは誰かの命令で戦う獣、あるいはただ食を求めるだけの獣とは程遠い。
もしかするのならば、それは押し掛ける以外に、選択肢が無い存在なのではないかと思えてしまう。
それの背に紫の電気アーク(放電流)が落ちたのを見た。そういえば、実験室にて同じ様な環境に置かれていた動物が居た気がする。
電気刺激により、他人が意図した動きに操作することが出来るというものだ。それと同じ様な行動であったのか、知りたく思った。
それの足の爪に引っ掻かれて大変痛かったのだが、少しの哀れみが生まれたこともまた事実だ。
報告はイサンより。以上。

それは雷鳴の様な泣き声を持っていた。
より詳細に言うのであれば、世界中の雷鳴と稲妻がその身に降り注ぐ様に集まったときに、唸りと雷鳴が一緒くたになっていると言っても過言ではない。
自然とこれの電気が何処からやってきたものか、理解した。これは動く蓄電池の様である。落ちる稲妻をすべて身体で抱き、それを自分の力として使うのだ。
しかしそれが力を使用するのは、自ずから強くなるためなどではない。まるで集めた電気が指し示す場所へと動くようであり、さながら天の意のままに動かされた様な錯覚に似ている。
そんな物思いに耽ったが、ファウスト嬢が言う事には幻想体に対してこの様な所感を持つこと自体が正確ではないのだとして私の物思いを覚めさせた。
感傷的になってしまったが、報告はイサンより。以上で終わりである。