この日も、いつもと変わらぬ日のはずだった。
シロとタタラの、いつものような食事、鍛錬、お喋り。
そしていつものように、どちらが怖い鬼らしいか比べ合う。
かまくらの中で、定番のやり取りをして終わるはずだった。
シロは突然、視界が大きくぶれるのを感じた。
気付けば、自分の顔と天井の間に、タタラの顔がある。
タタラが、シロの両腕を押さえ、馬乗りになっていた。
「油断したね、姫」
タタラの表情はわからないが、陰鬱な口調だった。
「本当に、私が怖くないって、思っちゃった?」
シロは、目を丸くしてタタラを見上げていた。
タタラが嘲笑うように言う。
「一人でいるから、こんな目に遭うんだ」
今日はもう、アオや与次郎たちが訪れる予定はない。
周囲には、まったく人の気配がなかった。
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