「クククッ」
おっと、つい笑いが漏れてしまった。まあ、仕方ないか。ここまで策が完璧に嵌る事など、【現代の諸葛亮】とも呼ばれる私―――あんみつ―――といえどそうそうあることではないからな。どれだけ敵の、名前はなんだったかな?確かオギワラ軍だったか、は馬鹿なんだろうか。まあ、この私の頭脳に比べたら、殆ど全ての人間が馬鹿になるがな。
「閣下、将軍閣下!至急、お耳に入れたい事が」
おっと、伝令が帰ってきたようだ。吉報か凶報か、さてどちらかね?まあ、吉報だろうがな。
「まあ、落ち着け。何があったのだ?」
「ハッ!そ、それがハギワラ軍の兵が突然自殺を始めたのです。それも将校、雑兵全てが、です」
なに?それは、何かの策なのか?いや、薩摩隼人の様な人間ならともかく、オギワラ、いや、ハギワラ軍の兵は皆、徴兵された民のはずだ。自身の命を犠牲にして、将を逃がすということは有り得ん。ということは、だ。恐らく我らに包囲された為、生きるのを諦めたのだろう。誠に残念だ。我等は捕虜を殺す事などしないというのにな。
コツン コツン
突然、何か硬いものが落ちてくる音がしてきたぞ。投石か?いや、それにしては音が軽い。足元を見ると、そこには氷の粒が落ちていた。雹か、だが今は春、雹が降るのはおかしい。そう音に気を取られていると次は頬が濡れた。そして雨が降り出してきた。本降りになる前に、自殺したという兵士だけ確認しておこう。
ここで引き返していれば、まだ、私の部下は助かったのかもしれなかった。
私の目の前に広がるのは、文字通りの地獄絵図だ。死体が動き出し部下の体を喰い、雷が焼き殺し、竜巻が墜落死させる。まさに地獄の光景だ。まだ、生きているのは私だけ。他の人間は皆ゾンビかミンチ肉だ。それに、私も生きているとはいえ、手足がもがれた達磨状態だ。いつ喰われても、おかしくはない。
「うぁ、酷いね……屍肉の臭いがプンプンするよ……」
どこからか人が歩いてきた、冴えない男な上に命乞いは私のプライドに傷が付くが背に腹は変えられん。
「頼む、そこの人、私を助けてくれ!金なら払う!この地獄から、早く連れ出してくれ!」
そんな私の醜態を見て、彼はこう言った。
「嫌だね」
「そんな!何故なんだ?私はあの、あんみつだぞ!」
「ああ、知ってるよ」
「ならば何故!」
「だって、僕、ハギワラだよ?この状態を作ったのは、紛れもないこの僕だ。だから、君は助けられない。残念だけど、僕の
そんな、頼む!待ってくれ!私は、私はまだ死にたくない!食も、金も、女も、まだ楽しみたいのに!頼む、助けて、助けてくれぇ!
色付き文字
色付き文字
色付き文字
色付き文字
あれから、五ヶ月後、私はまだ死ねない。何かの動物の死肉を食わされ、目の前で部下の肉体や私の手足を喰われ、糞尿の混じった泥水を飲まされ、体に蛆が湧いても、死ねない。この苦しみは、いつまで続くのか。こんな事が続くのなら、早く狂ってしまいたいものだ。
痛ぇ