「......フゥー」。ヘルシング、彼女には悩みがあった。長く悪との闘争に明け暮れたせいで、自分が少しずつ闇に呑まれて行っているに気付いたのだ。美しい金色の装飾は剥げ、心を闇が蝕んで行く。思いにふけるヘルシングを、戦場は待ってはくれない。____刹那、ヘルシング目掛け砲弾が飛来する。直撃コースだ。「ッ...!」。ヘルシングの行動は速かった。持ち前の機動力で、砲弾の直撃を免れた。砲弾は車体を掠めて地面を抉る。そして、次の行動も速かった。すぐさま砲弾の飛来した方向に砲搭を向け、敵を探す。......既に漆黒のそれは、疾走を開始していた。...あれは...憎き宿敵。ヘルシングに砲を発射しないと言う手段は無かった。二発の砲撃音。...その一発は確りと漆黒の戦車の履帯を捉えた。...ヘルシングは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。数秒後、漆黒の戦車は再び疾走を開始した。"魔法の履帯"。それが奴に与えられた特殊能力。ヘルシングが再び奴へと砲を向けた頃には......奴はこちらへ向かい突っ込んで来ていた。ドッグファイトは奴の方に分がある。やられる。そう思いヘルシングは目を閉じた。......しかし、その時は一向にやって来ない。何故?ヘルシングは目を開ける。...聞きたくもない声が聞こえた。「......ふふ。随分と潔いのね、ヘルシング」。「.........何のつもり?"ドラキュラ"」。短い会話。ヘルシングの隣には......砲搭をこちらに向けたドラキュラがいた。きっとドリフトで滑り込んだのだろう。「...やるならやりなさい。ドラキュラ」。「あら、物騒ね。今日はそんな事のためにここへ来たんじゃないのだけれど?」。「......何?」。「......ふふ。アナタ、随分と似合うようになってきたわね、その服」。「黙れ。お前に褒められても、嬉しくなんてない。反吐が出る」。「あら、手厳しい。私的には、あのキラキラした装飾よりも、こっちの真っ黒でドロリとしたアナタの方が...好きよ」。「............黙れ。失せろ。私を茶化しに来たのか?嗤いに来たのか?」。ヘルシングは殺意を込めて砲を向ける。「...いいえ?ただ、褒めに来ただけよ。危うくダメージを貰う所だったけど。......じゃ、言う事は言ったし。私はお暇させて貰うわ。吸血鬼狩りさん♪」。......直後、砂煙。瞬く間に最高速度へ到達したドラキュラは、暗闇へと消えて行く。...ヘルシングは、その後ろ姿に、榴弾を撃ち込む事が、できなかった。
作者です、加筆&修正
わざわざ時間をとって推敲して頂きありがとうございます。木主さんの文才は 自分でビジネス始められるくらいの素敵な特技だと思いますょ。時間はかかりますが WGといい縁があるように努力してみますね !
いつハイクを詠まされるのかとハラハラした