モリコキンメフクロウ

Last-modified: 2020-07-25 (土) 17:13:58
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名称:モリコキンメフクロウ(森小金目梟)、Forest owlet
学名:Heteroglaux blewitti (Synonyms:Athene blewitti)
保全状況評価:EN 絶滅危惧 (IUCN, 06 August 2018)

 
鳥綱
フクロウ目
フクロウ科
コキンメフクロウ属
 

インド中央部の森林に生息する絶滅危惧の固有種。
英名ではForest Spottted Owlet・Forest Little・Indian Forest Owlともいう。[1]
「種の保存法」国際希少野生動植物種。「ワシントン条約」附属書Ⅰ掲載種。

 
  • 発見

モリコキンメフクロウは、1872年マディヤ・プラデーシュ州東部のフルジャー近く(現チャッティースガル市)、アイルランドの役員F.R.Blewitt氏によって初めて発見された。
彼は、インドで勤務する著名なイギリスの鳥類学者であるA.O.ヒューム博士(A.O.Hume,1829.6.6 - 1912.7.31)に標本を送り、ヒュームはこのフクロウを新種と判断し、その鳥を「Blewitt」と名付けた。
(最近の文献では、この鳥はもともとF.R.Blewittの弟であったWilliam Blewitt氏によって集められたと言われている。 W.Blewittはパンジャーブ州の税関職員だったので、インド中央部で鳥を調査する際、上司の怒りを避けるために彼の兄の偽名を使用したのだという)[2]

 
  • 外見[7]

全長:20~23cm(雌雄の体格差に関するデータはない)
体重:241g(オス1例)
翼長:145~154cm

小型で、羽角はない。体部上面は茶色がかった灰色で、頭頂部には白色のごく小さな斑点が散る。
頭部と背中にもわずかに斑点が入るが、なかには斑点のない個体もいる。
後頭部の眼状紋と、首の後ろの襟状紋は不鮮明。
肩羽には2~3の白斑、初列風切(しょれつかざきり。風切羽のうち、人の手首に相当する部分から生えている羽毛)には白色と黒茶色の横縞、雨覆(あまおおい。風切羽の根元を覆う短い羽毛)には肩羽と同様の斑点が見られる。
暗い茶色の尾には白色の横縞が入り、もっとも先端に近い縞は幅が5mm以上ある。
顔盤(フクロウ類に見られる目の両脇にある集音するためのパラボラ型の羽毛構造のこと)はほぼ白色で目立たないが、淡い茶色から暗い茶色の細い横縞が入る。
白くて細い尾斑(目の上にある眉状に見える線のこと)は直線的で、眼は黄色く、まぶたの縁は黒。くちばしは黄色で、蝋膜(上のくちばし付け根を覆う肉質の膜)は黒みがかった黄色。
体部下部は白色で、白い腮と喉にくっきりと入る濃色の帯模様は普段は見えない。胸の上部にはむらの無い灰茶色の横縞が入るが、この縞は中央で途切れることもある。
胸の下部の両側と脇腹には幅広で暗い茶色の横縞。跗蹠(ふしょ。あしゆびの付け根からかかとまで)は真っ白の羽毛で覆われ、長い趾(あしゆび)の上面はくすんだ黄色で、白い綿羽が生える。爪は黒色で頑丈。
幼鳥の姿は不明。
飛翔の姿は敏捷で力強く、波打たずに直線的に飛ぶ。

  • 生態

フクロウとしては珍しく昼も夜も活動している。[6]
食性についての詳細な記録はないが、頭骨と脚の大きさを考えると、同地域に生息するインドコキンメフクロウより大型の動物を狩ると考えられる。
おそらくトカゲや小型の哺乳類、および大型の昆虫などの無脊椎動物を主に捕食するのだろう。[7]
とても大きな爪を生かし、自身のサイズの2倍の大きさの獲物を捕えることもある。[3]

亜種のない単型種で、生態や分類に関する研究は十分ではないが、尾を振り上げる動作から、コキンメフクロウ属よりスズメフクロウ属に近いと推測される。
ただし、インドコキンメフクロウとの交雑が可能であることが証明されている。[7]

 
  • 生息地

インド中部、マディヤ・プラデーシュ州の限られた森林部に点在。
亜熱帯および熱帯の乾燥した落葉樹林を好むが、湿った落葉樹林または密集したジャングルでも見られ[3]、さらにはマンゴー農園などにも棲む。標高は500mまで。 [7]
現在は急速な森林部の開拓により、生息地が狭まり、生息数も減少傾向にあると言われている。[3]

しかしながら、2014年10月には西ガーツ山脈(BNHS ボンベイ自然史協会)[5]で、2016年には東ガーツ山脈付近のパピコンダ国立公園(BNHS ボンベイ自然史協会)[4]で目撃されているため、生息域はマディヤ・プラデーシュ州だけでなくインド全域に及ぶ可能性がある。
良好な保護下にあるインドのメルガット・トラ保護区には、多くの個体(約100羽)が生息している。[6]

 
  • 絶滅と再発見

1872年に発見されてから1884年までの間に、計6つの標本が集められた。[2]

  1. 1872年、前述のBlewittのもの。
  2. 1877年、オリッサ州のValentine Ball氏によって。
  3. 1880-83年、マハラシュトラ州のJames Davidson氏によって4件。
     

しかしながら1884年以降は、数回にわたる大規模な調査にも関わらず発見に至らなかったため、1972年、アメリカの鳥類学者および野生生物保護学者であるS.ディロン・リプリー博士(1913.9.20 - 2001.3.12)の提言のもと、絶滅の可能性が考慮されるようになった。

 

その後、アメリカの鳥類学者であるパメラ・ラスマッセン博士は、モリコキンメフクロウの羽について研究していた際、インドの学者が誤った写真に基づいて調査をしている事に気付いた。
(少し先の話となるが、1990年代、イギリスの兵士、諜報官、鳥類学者であったリチャード・マイナーツハーゲン大佐(1878.3.3 - 1967.6.17)の鳥類コレクションを精密に分析した結果、盗難と改ざんを含む大規模な詐欺が明らかとなった。モリコキンメフクロウの調査情報は、この人物のコレクションを参考にしていた)
正史に基づいた調査として、彼女たちはオディシャとチャッティースガルでの調査から始めたが、かつての森は耕作地へ変わり果てており、再発見には至らなかった。
その後、1997年11月、彼女らはマハラシュトラ州ナンドルバル地区の近くに調査の場所を移すと、そこで2羽のモリコキンメフクロウを見つけることができた。実に113年振りの再発見であった。[2]

 
  • 出典

[1]吉井正監修、三省堂世界鳥名辞典、2005年、P513
[2]http://www.conservationindia.org/articles/the-enigma-of-the-forest-owlet
[3]http://www.edgeofexistence.org/species/forest-owlet/
[4]https://tokyo.birdlife.org/archives/world/12164
[5]https://www.thehindu.com/news/national/other-states/forest-owlet-sighted-in-madhya-pradesh/article6789902.ece
[6]フクロウ大図鑑(Marianne Taylor 著、山崎剛史・森本元 監訳、緑書房、2018.7.20)
[7]世界のフクロウ全種図鑑(Heimo Mikkola 著、早矢仕有子 監修、五十嵐友子 訳、株式会社エクスナレッジ、2018.9.1)