モモイロペリカン

Last-modified: 2019-05-20 (月) 20:18:50
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名称:モモイロペリカン(桃色鵜鶘)/Great White Pelican
学名:Pelecanus onocrotalus
保全状況評価:LC 低危険種 (IUCN,09 August 2018)

 
鳥綱
ペリカン目
ペリカン科
ペリカン属
 

長い嘴、ピンクの脚、風切り羽は下側が黒色を呈し、頭頂部から後ろに向けて羽が伸びている[3]。
繁殖期の間、オスは顔の皮膚が黄色がかったピンク色になり、メスは明るいオレンジ色になる[3]。
「モモイロ」はこの繁殖期の羽色から取られている。
脚はかすかに茜色を呈する。前額部は肥大し、瘤を形成する。非繁殖期の成鳥は羽色がくすむ。若鳥は上半身が灰色を帯びた茶色で、下半身が白茶色である。裸出部は淡い色を呈する[3]。

 

サイズは148-175cm、翼幅226-360cm、重量10-11kg[2]。
東ヨーロッパから西モンゴルにかけて繁殖し、北東アフリカやイラクから北インドにかけて越冬する[3]。

 

かつてはたばこの入れ物や刀剣の鞘にそのくちばしの袋が使われていたことがある[4]。
現在では羽や皮を用いて衣服が作られ、またアフリカなどではモモイロペリカンの糞から肥料が作られている[4]。
中国やインドでは、若いペリカンから取れる油はリュウマチに効くとされている[4]。

 
  • 生息地

ユーラシアでは、繁殖のための広大なヨシ原で、塩気性の湖、三角州、干潟、湿地などに生息する。アフリカではアルカリ性を含む湖または海で生活し、近海の平らな島や陸地で繁殖する。狩りはたいてい浅く暖かな水域で行われる。一般的に低地に棲む[3]。

 
 
  • 繁殖

温暖地域では春、アフリカでは1年中、インドでは2~4月から繁殖期を迎える[3]。
繁殖は砂州や島、あるいは沖合の小島など広い水域の近くで行う。ペリカン類はどの種も集団繁殖地にたくさんの鳥が集まって、巣を地面の上か樹上に密集させてつくる[1]。
地面の巣はふつう、少し地面をかいて掘っただけのわずかなくぼみだが、中には葦や枝を積み重ねて[3]、産座に羽毛をしくものもいる[1]。
アフリカでは時折、ほとんど裸出した岩に直接作ることもある[3]。
雛は羽毛のない状態で孵化し、黒褐色である。育雛期間は65-75日間。性成熟はおそらく3-4年といわれている[3]。

 

モモイロペリカンはなわばりを持っており、特にオスは侵入者があると口を開けたり、くちばしを鳴らしたりして相手を威嚇する[4]。
それでも引き下がらずにいると、その大きなくちばしを使って強力な攻撃をしかける[4]。

 

卵の大きさ[1]
:80~104×52~64mm
一腹卵数 [1]
:2(まれに3~5)
抱卵[1]
:雌雄ともに行う、29~30日。

 
  • 食性

たいてい300‐600gくらいの魚。ヨーロッパではコイを好む。中国ではボラが記録されている[3]。
一日に食べる量の90%以上がコイやカワスズメのような比較的大型の魚、残りの10%がそれより小型の魚となっている[4]。
アフリカでの最も一般的な獲物はティラピアである。エサのほとんどが大きな魚だが、小魚も食べることができる[3]。
一日の採餌量は900-1200gと見積もられている。

 

モモイロペリカンはグループを作って漁をする珍しい鳥であり、具体的には8-12羽が馬蹄型に並び、一斉にくちばしや羽を使って魚を浅瀬の方に追いやり、獲物を水の上にすくい上げてそれを食べる[4]。
この時魚とともに入ってくる大量に入ってくる水はく ちばしの間から外に出すことができる[4]。
ときおり単独で漁を行うこともある[3]。

 

アフリカ南西部ウォルスベイでは、羽の生えそろっていない若鳥は鵜(キノドハナグロウ[4])の卵やヒナを食べるため、鵜の減少がペリカンの生息数に影響すると報告されている[3]。

 

鵜の雛に限らず、鳩やケープシロカツオドリの雛の捕食する様子も各地で見られている。
・鳩の捕食

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・ケープシロカツオドリの雛を捕食

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  • 渡り

ルーマニアのドナウデルタでの繁殖集団は、アフリカで越冬する[3]。
アジアの繁殖集団は、越冬のためパキスタンに渡る[3]。
熱帯地域と温暖地域の個体群は、定住性の場合と移動性の場合があるが、いずれも渡りはしないと考えられている[3]。
飛距離は長く、定住性の場合でも、エサ場を求めて1日に100km近い距離を往復しているという報告がある[3]。

 

普通日本に渡ってくることはないが、かつて沖縄の離島に迷い鳥として飛来した例がある[4](日本鳥学会の「日本鳥類目録」によると、沖縄県で1979年と1983に、迷鳥として目撃されたと記されている[5])。
また、現在も千葉県印西市の印旛沼には、どこから飛来したのか分からないが一羽生息し(少なくとも1996年から住み着いている)、地元漁師らに愛されている[5]。
・迷鳥(千葉県・北印旛沼)1996年4月15日

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・漁師との帰港 2018年11月?

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また、2019年4月には、1985年7月に石川県羽咋市内の羽咋川河口で撮影されたモモイロペリカンと思われる写真が見つかっている[5]。

 
  • 出典

[1]山岸哲監修、世界「鳥の卵」図鑑、2006年、P37
[2]oiseaux.net:Great White Pelican http://www.oiseaux.net/birds/great.white.pelican.html
[3]静岡市立日本平動物園:モモイロペリカン https://www.nhdzoo.jp/animals/naka.php?animal_uid=168
[4]ZOO CAN DREAM PROJECT:モモイロペリカン http://animals.main.jp/fowl/white_pelican.html
[5]中日新聞:ペリカン見た人 便りを(2019年4月23日) https://www.chunichi.co.jp/article/ishikawa/20190423/CK2019042302000031.html