続・野球との関わり(高校生・最終回)
マコっちゃんに高校最後の夏がやって来た。
全国高校野球の予選、東東京大会。
マコっちゃんがキャプテンを務める我が校の野球部は、決して強いわけじゃなかったが、無事に1回戦を突破した。
そして迎えた2回戦、僕とジュン君は応援に行く機会に恵まれた。
場所は神宮の第二球場。
この日のマコっちゃんは、6番ライトでフル出場。
日ごろ当たり前のようにつるんでる友人が、この時ばかりは光り輝いて見えた。
正直、かなり驚いた。
「全然強くない」と聞かされていたから、チーム全体としては、もっとショボいのかと想像していた。
しかし投手は非常にいい真っ直ぐを放っていたし、スタンドから見ても変化球がキレているのが分かった。
野手全体の守備力も、僕にはめちゃめちゃ上手に見えた。
やっぱ高校野球ってすげぇ!
率直にそう感じた。
相手チームの攻撃、二死ながらスコアリングポジションにランナーを背負い、ライトへのライナー性の打球が襲う。
僕は思わず悲鳴をあげたが、マコっちゃんは軽々と捕球しスリーアウトチェンジ。
外野からベンチに向かって颯爽と走るマコっちゃんの姿に感動し、足が震えた。
いつも僕やジュン君にイジられてるマコっちゃんとは、まるで別の人のような気がした。
我が校の攻撃は気持ちよくつながった。
マコっちゃんの打球も右中間を深々と破った。
あれよあれよと点差が広がっていき、気づけば9回を待たずしてコールド勝ちしていた。
両チームの選手たちが向かい合って整列し、帽子を取って深々と一礼する。
僕は懸命に拍手を送った。
ジュン君は感激のあまり泣いていた。
やっぱ野球選手ってカッコイイ!
心底そう思った。
何も早実じゃなくても良かった。
強くても弱くてもいい。
野球をやりたかった。
僕の夢をマコっちゃんが目の前でかなえていた。
眩しかった。
そして、そんな彼を誇らしくも感じた。
残念ながら、3回戦の応援には行けなかった。
翌日、マコっちゃん本人から、格上に惜敗したと聞かされた。
マコっちゃんは「あーあ、俺たちの最後の夏が終わってしまった」と言った。
僕は「試合後に泣いた?」と聞いてみた。
彼は「うん、家に帰ってから泣いたよ」と言ったあと、「斉藤由貴を聴きながら」と付け加えた。
ん?何ゆえ斉藤由貴??w
マコっちゃんはカバンからウォークマンを取り出すと、僕に「青春」というタイトルの曲を聴かせてくれた。