序章 エピローグ「小さな英雄」
カレントは窓の外に見える夜景をぼんやり眺めながら、着陸を待っていた。
カレント「ニューヨークの夜景が100万ドルなら、ここの夜景は500ドルってところか?」
菜々「500ドルは酷く無いですか?」
菜々にそう言われてもう一度窓の外を見る。
道や外灯は綺麗に整備されているが、建物はまばらにポツポツとあるだけで辛うじて夜景と言えるレベルだ。
カレント「訂正する。50ドルだ。」
菜々「値下がりしてるじゃないですか...」
カレント「はなからサファリパークに夜景なんざ求めてないさ。三ツ星レストランでディナーしてるんじゃ無いんだ」
菜々「そんなこと言って....ちゃんとパーク内にはいくつか都市があるんですよ?」
カレント「そうなのか?」
すると菜々が得意気に答える。
菜々「当然ですよ。これだけ大きな施設ですから。公共機関もあるんですよ。」
カレント「公共機関も?なるほど、ちゃんと一つの街として機能してるわけだ。」
菜々「そう言うことです。ちょうど今その内の一つに向かってますよ」
すると、タイミングを見計らったかのように。
パイロット「まもなく、アンイン地方都市部です。」
菜々「あ、窓の外を見て下さい!見えてきましたよ!」
カレントが窓の外を見ると、そこそこ大きな街が見えた。
自分がいたニューヨークには遠く及ばないが...
カレント「....うん、1000ドルだな。」
菜々「・・・・・・」
ヘリは街の上を飛んでゆき、病院のヘリポートに着陸した。
ヘリの扉が開き、降りるよう促される。
菜々「ありがとうございましたー!」
カレント「...バスじゃないぞ。」
ヘリを降りると救急隊が待っていた。
救急隊員「ご無事で何よりです!何処かお怪我などはありませんか?」
カレント「いや、特に無いな。」
菜々「私も大丈夫です。」
すると、爽やかな笑顔で救急隊員がで答える。
隊員「わかりました!では、念のため検査をしますので病院の中へ。」
日本の救急隊員はみんなこうなのだろうか?
だが、病院に行くなら丁度良い。病院で電話を借りよう。
港へ来ている迎えと落ち合う手筈だったが、予定が大幅に狂ってしまった。
それに、もう一つ確認したい事がある。
菜々「さあ、行きましょうカレントさん!」
カレント「そうだな。」
ヘリポートから少し歩き、病院へと入る。
病院のロビーに入ってすぐ、カレントが菜々に言った。
カレント「さて、俺の付き添いもここまでだな。」
菜々「付き添いって...そんな保護者みたいな...どうしてですか?」
カレント「そりゃそうだろう?俺には俺の、君には君の用事がある。」
菜々「それもそうですよね...」
カレント「どうした?元気が無いな?」
菜々「そんなこと無いですよ!」
口ではそう言ったものの、菜々はカレントと別れるのが少し心細かった。
菜々「カレントさん...本当にありがとうございました。」
菜々がカレントに頭を下げる。
カレント「そんなに改まることじゃない。それに、お礼を言わなければならないのは俺の方だ。」
菜々「え?」
カレント「君はあの時逃げれたにも関わらず、あの場に残り仲間を助ける決断をした。」
カレント「君が仲間を助けようと言う熱意を見せてくれたから、俺も頑張れた。」
カレント「ありがとう。残ってくれて...」
菜々「そんな、恐縮です。大した事も出来なくて...」
カレント「いや、大した奴だよ君は。君のこれからの活躍を期待しているよ。」
それを聞き、少しの間のあと菜々が元気に答えた。
菜々「...ありがとうございます!わたし、頑張ります!」
その言葉に、カレントがニヤリと笑う。
カレント「よく言った!さあ、行け...」
女性救急隊員「さあ、こちらへ...」
隊員に促され、診察室へと向かう菜々に声を掛ける。
カレント「また逢おう!」
菜々「はい!」
また逢おう、”小さな英雄”
BGMを付けないと死ぬ病