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カレント「あ、あぁ..ジャック・カレントだ。よろしく..」
予想外の人物の登場に、カレントは困惑していた。
誰も引き受けたがらない危険な仕事に、たった一人志願した人物だ。よほど屈強な男だと思っていのだが...
目の前の青年はハッキリ言ってどこにで居そうな普通の青年だ。
だが、もしかしたらとんでもない人物かもしれない。そんな淡い期待を抱きカレントは問いかける。
カレント「彼は前はどんな役職を?」
ミライが得意気に答えた。
ミライ「それがですねカレントさん!なんとトワさんはここの"園長"なんです!」
予想以上の答えにカレントは思わず眉をひそめる。
カレント「園長ぉ!?」
トワ「いえ!違います!ただの
トワが慌てて訂正する。どうやら冗談のようだ。
ミライ「でも、半分本当のことじゃないですか?」
カレント「と言うと?」
ミライ「なにを隠そう、このトワさんは例の”女王事件”の時に、パークを救った英雄なんですよ!」
”女王事件” カレントは大佐からJPP発足のきっかけとなった大規模なセルリアン襲撃事件とだけ聞かされていた。
ミライの発言が本当かは分からないが、本当だとすれば実に心強い。
カレント「ほぉ、本当かね?"園長"さん?」
トワ「か、からかわないでください。そうですね...正しくは、"救ったメンバーに同行していた"ですね..」
カレント「十分すごいじゃないか。」
ミライ「そうでしょう!それに、”同行”じゃなくトワさんが中心となってパークを救ったんです!」
カレント「なるほど、"園長"と言うのはその功績に対してか?」
カレントは安堵していた。最初に一目会ったとき、彼がとても戦闘経験など積んでいなさそうだったからだ。
だが、この青年はパークを脅かしていたセルリアンを倒せるほどの才能をもっているらしい。
その体格でいかにセルリアンを倒したのか、カレントは興味があった。
カレント「で、君はどうやってセルリアンを倒したんだ?」
すると、トワは苦笑いし、
トワ「いえ、僕の力で倒した訳じゃないですよ。」
その言葉はカレントには理解出来なかった。いまいち会話が噛み合っていないのを感じた。
トワ「フレンズの皆さん”と”倒したんです。」
カレント「あぁ..なるほど..いや、そう言う意味じゃない。君の戦闘方法の事だよ。」
トワは少し返答に困ったように、
トワ「いや、僕はセルリアンと戦ってません。」
カレント「どういう....意味だ....?」
パークを救った”英雄”が戦っていない?カレントはいよいよ混乱してきた。
トワ「フレンズのみんなに戦って貰いました。」
その一言で、カレントは自分の血管が切れたのが分かった。
ようやく言っている事が理解できた。こいつ、アニマルガールに”指示だけ出している”
自分より小さな少女達に戦わせていたのだ。
それなのにこいつ、のうのうと「皆さん”と”倒した」なんて言っている。
カレントの気も知らずに、ミライが呑気に力説する。
ミライ「トワさんは行く先々で、セルリアンによって引き起こされた問題を解決して来たんですよ」
違う、問題を解決に導いたのはこいつかもしれないが、実際に戦い、傷ついたのは
カレント「ハハ...それはスゴいな...だがトワ、一ついいか?」
トワ「なんでしょう?」
そう言ってトワは屈託のない笑顔で聞き返す。
自分が一切危険を犯さず、アニマルガールを危険にさらしてきたことを悪びれる様子もない。
そんなことを意識した事もないのだろう。
自分が危険を犯さずに指示だけ出して英雄扱いされる。
まるで軍の司令官だ。と、カレントは思った。
カレントは感情を押さえ込み、静かに、震える声で言った。
カレント「トワ、”司令官”って知ってるか?」
トワ「司令官?」
カレント「今のお前の様なヤツのことだ。」
トワ「は、はぁ...?」
何の事か分からず困惑するトワを見て、カレントは失望した。
”司令官”と言う言葉を自分と照らし合わせて察してくれると期待していた自分を嘲笑いたい気分だった。
カレント「・・・・まぁ、いい....トワ、すまないが今日は帰ってくれるか?色々あって少し疲れていてね...」
トワ「・・・・・分かりました!これからよろしくお願いしますね!」
トワが手を差し出す。カレントは、何かに耐えるように握手に応えた。
カレント「よろしく....」
トワ「でも、とても優しそうな方で良かったです。軍の方だと聞いた時にはどんな人かと...」
トワはニッコリと笑っていた。カレントも青筋を浮かべたまま微笑む。
トワ「では、また...」
カレント「・・・・・・・・・」
ミライ「カレントさん。私はトワさんをお送りして来ますので。」
カレント「わかった....」
二人が出て行き、部屋にはカレント一人となった。
カレント「大佐...あんたの言う通りだ...”普通に食われる肉””人間より強いからと言って少女達だけを戦わせる事に疑問を抱かないやつら”....何だかこの場所は”嘘臭い”」
カレントのこの施設に対する疑念は大きくなっていた
カレント「だが、まあいい。俺の下で働くからには”指示だけ出す”なんて事が出来ると思うなよ」
カレント「根性を叩き直してやる!」
To be continued