†新生メガゴルダック王国†

だけど、ひたすら謝った。

自分でも理解できなかった。

「僕がどんなに許しを乞いても許しを得られる人間ではないことは重々理解しております、しかしこれからは笑って生きていくのでのでせめて貴女の隣で生きることくらいはどうかお許し願います。」

「もう笑って生きていくからごめん。」

「今までごめんね。」

「本当にごめんなさい。」

「今まで誰の名前も呼ばないで笑わずに生きてきてごめんなさい。」

その子は空っぽになった僕の心をいっぱいに埋めてくれた。いや、埋めるどころかパンクさせたんだ。

そういえば最後に笑ったのはいつのことだったろう。

「わ、笑う……？」

「あ！けろくん！教科書返しに来たよ！」
「え、う、うん…あ、あああありがとう…」
「あれ？どうしたの？そういえば前から思ってたけどけろくんっていつも笑ってないよね？たまには笑ってよ！」

僕は生まれて初めて人を好きになった。

気がつけば僕の目は涙で濡れていた。

初めて人として認められた気がした。

こんなに会話をしたのは何年ぶりだろうか。

「あ、いきなり話しかけちゃってごめん！」
「あ、いや、違う、えっと……だ、だ大丈夫だよ」
「ありがとう！一年の頃は全然話さなかったけど、けろくんって優しいんだね！」
「え、あ…おーん、う、うん……」
「じゃあ授業終わったら返しに来るからね！」
「あ、え…お、おん…う、うん……！」

その時僕は我に返った、帰るべき我があることに驚いた。

何年かぶりに人に話しかけれらた。

その子は一年生のとき同じクラスで二年生で別のクラスになった子だ。

「…えっと、けろくんだっけ、教科書忘れちゃったんだけど貸してくれる？」

でも二年生の或る秋の日だった。

話し方も忘れていた。

高校でも誰とも話すつもりはなかった。

それから勉強を頑張ってなんとか高校に入学した。

結局、中学校生活もほとんど話すことも笑うこともなく卒業した。

僕は彼を助けようとしたけど結局何も言い出せなかった。

ジュカイン、昔のアニメにそんなのいたっけな。

懐かしい響きだった。

(ジュカイン…… ポケモン……)

「やめてよ〜！僕のジュカイン返して！」
「なんだお前ポケモンバトルで負けたら好きなポケモン貰っていいって約束したじゃねぇかよ！」ﾊﾞﾝｯ
「痛い！やめて！ジュカインだけは駄目！それに攻撃が全く効かないミカルゲ使うとかズルい！」
「うるせぇな！お前が負けたって事実には変わりねぇだろ！」ﾄﾞﾝｯ！
「痛いよ〜」

でも一度だけ話しかけようとしたことがあった。

僕も話しかけようとすらしなかった。

中学には他の小学校から入ってきた人がいっぱいいたけど誰一人話しかけてこなかった。

そのまま僕は近くの中学校に入学した。

それからずっと話すことも笑うこともなく小学校を卒業した。

みんなが謝っていたし、誰も笑っていない中で自分だけが笑うことなんて僕にはできやしなかった。

それからもう笑わなくなった。

僕はその日、結局何一つ言葉を発しなかった。

(そうか、みんな僕がいたせいで怒られたんだ。僕がいなければみんな怒られずに済んだんだ……)

誰も僕に話しかけない。
僕も誰にも話しかけられなかった。