真昼の迫真ランド

【SS】Requiem:channel / 37

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ちゃむがめ 2021/06/29 (火) 23:52:53 修正

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「お待たせ致しました、マティーニがお一つ、一昨日の"ロマネ・コンティ"がお一つでございます。そして────」
「こちら、オレンジジュースでございます。あちらのお客様より"昨日の夜のお詫び"だそうです。」

「は、はぁ…」

未だに何のことか釈然としない様子の私に奥のテーブル席に腰掛けたホーモォの視線に気づく、「遠慮するな」と訴えかけるような目でこちらに視線を送るホーモォの圧に耐え切れず私はコップに口をつける。

「…おいしい、こんなにおいしいオレンジジュース初めてです…あのっ…ありがとうございます!!」

心からそう思った、反射的に私はホーモォに会釈をする。
ホーモォは満更でも無さそうな顔をしながらワインを上機嫌に味わっている。

「ハハッ!ところで、だ灰菜。断片(フラグメント)については星野から聞いたな?」
唐突にミッキーが甲高い声で切り出す。

「はっ、はいっ!でも私は…断片(フラグメント)なんて持ってないんです…本当に……心当たりも無くて…」モジモジ

「ハハッ!心配するな!お前はまだ自分の秘められた断片(フラグメント)を知覚していないだけだ、それについては明日から俺が直々に手解きしてやる。」

気づけばミッキーはグラス片手に私の隣、カウンター席に腰掛けていた。

「そ、そうなんですか…」

「振り回すようで悪いが、灰菜。明日からこの国の命運を揺るがす争いが起きる。俺達は"最悪な未来"を避ける為にやがてその争いに身を投じることになるだろう。その時は灰菜、お前の断片(ちから)が必要になる。」

唐突にミッキーの口から出た"争い"、"最悪な未来"という穏やかじゃない言葉の数々に私は目が回りそうになった。

「へ、へー…へへへ…あらそい…?」

「余りにも現実味が無くて目が回りそうか?それもそうだ、いきなりこの国の未来を変える為に力を貸してくれなんて言われても困るよな。ハハッ!俺だって困る。」

体が熱い、身体中が紅潮しているようだ。
眩暈がする、体の平衡感覚が欠落していく
私は意識を失い席から崩れ落ちそうになる。

「…おい、大丈夫か?」
(すんで)のところでミッキーが私の左肩を支えるように掴む。

「ミッキー…ごめん!灰菜ちゃんが飲んだのオレンジジュースじゃなくて"カシスオレンジ"だ!」
「ハハッ!お前はもうバーテンダー失格だな!星野!」
「…申し訳ない」
「こりゃ傑作だな、ギャハハ」
「ハハッ!笑ってる場合かよ、とりあえず俺が部屋まで運ぶ」

薄れる意識の中ミッキーの逞しい腕が私の身体をお姫様抱っこで抱き抱えられるのが分かる。

「あは…これ……おひめさまらっこ………?」

「安静にしてろ、お姫様。」

やがて、私の意識は深い深い闇の中へと遠のいていった…。

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