小学校2年生のネパールの女子児童と日本語を学び始めました。
今回は、ひょんなことから発見した「中指を突き立てる」行為が小学生の学校生活の中で行われていることについてです。
日本語学習上で小さな事件が起きました。
事件とはこうです。
ネパール人の小学校2年生と、日本語学習の一環で、身体の名称と漢字の表記を学んでいるときのことです。1年生の復習で、口・耳・目・足・手・・と順調に漢字を書いてきました。次に手のことを話題にして日本語の「指の名称」を聞いてみました。小指を答えましたが、そのほかの指の名前は出てきませんでした。そこで、白紙の上に手を置いてもらい、手のかたちをなぞって紙面に一緒に描きました。親指の名称を説明して、親指の絵のところに「おやゆび」とひらがなで書くように指示しました。ほかの3本に名前は・・?と聞くと、わからないな・・・というしぐさでいましたが。「これはないかな?」と指を一本ずつ立てて聞いてみました。すると、中指のところに「しね」と書いたのです。「え!」と思いましたが、静かに、「それは指の名前ですか?」と聞くと、うなずくのです。これは本当にそう覚えたのだと考えて、一緒に参加していた日本人の小学校3年生の女児を呼んで聞いてみました。
小学校では、喧嘩した時や相手の悪口を言うときには中指をつきたてて「しね」というのか尋ねると、「そういいます。」という答えを得ました。
これでわかったことは、ネパールの女児は、「そうされたか、そうされている場面をなんども見ている」という事実です。その体験と二重写しとなって、私の質問とパフォーマンスから指に絵のところに「しね」と書いて見せたのです。指の名称として答えたのだと私はおみましたが、事実は二重写しの表現だったのです。今回はその場で確かめられました。
小学校生活の中でのことであり、小学校では「しね(死ね)」という意味で行われている動作なのです。この事実は重いと考えました。
この年代の子どもは親や先生が注意したくらいではなかなかやめないものです。自分の生活圏や世界の中のことは自分でやり返さないと気が済まないのです。よい意味では自立期ですが、反社会的な言動もするのです。
注意して、クラスや学校生活の全域に注意を向けないと最悪「いじめ」に発展する事態です。小学生でも親や先生が認知できない理由で「自殺」する児童もいる現実を重く受け止めたいと思います。したがって、「事件です」と書いたのです。ご理解いただけますか。
げんきに1年間通った学校生活、「楽しいですか」、と聞けば、うなずいている児童です。ところが上記のような経験をしているのです。「31回目で書いたように」おとなが、Aさん、Bさんのように、比較すると大きな違いがある受け止めかたをしている現実からは、学校での言語生活の実態はなかなか掴めません。
事柄に関する懸念は小学校の校長に伝えました。幸い校長の返事は「みんなで共有します」という内容でした。
本当に「楽しいって何だろう?」と考えてしまいます。
皆さんは、いかがですか。
宮本敏弥(地域日本語教育コーディネーター:文化庁H29研修修了)