白い壁に囲まれただだっ広い一室。窓がなく、天井の無数の照明がなければ部屋を確認することは難しいだろう。
ただ、青い液体がそこかしこ飛び散り、壁に残る弾痕、巨大なドラゴンの爪にえぐられたかのような傷が付いた部屋の中心に誰かが倒れている光景を照明は鮮明に照らしてしまう。
『ピーッ…"作戦終了"…ッー』
脳を通して身に着けた機械からの機械音声を発する。
倒れこんだ"誰か"は普通の人間とは外見が離れており、背から触手なようなものを何本か生やしていた。兵士のような人々と白衣に身を包んだ彼らが息絶えた死体を囲んで何かを会話しているが、私はそれを少し離れたところから見ているだけだった。
何かと聞けば、半エーギルの実験に失敗して同化が異常に進行し、同伴していた警備員と研究者もろともあの触手で切り裂いた…、のだとか。丁度研究施設にいた私は"誰か"の鎮圧作戦に駆り出されたのだが、…その"誰か"は子供であった。触手を無数に動かし盾を、人を、壁を切り裂き、死体を貪る怪物は多数の犠牲を経て無力化された。
エーギルの細胞を体に含んだ時点で"人"として生きれる時間は、普通の人よりも制限される。体を蝕み、やがて海の怪物になる。抑制剤は同化を遅くできるがあくまでも延命だ。企業達は危険性の中に化学の発展を夢見て危険な研究を強行して、多くの犠牲を生んできた。私は"誰か"と同じそういった研究で生まれた副産物に過ぎない。
用済みになれば、不都合があれば、何がどうあれ処分される。所詮、彼らはそういうやつだから。
(いずれ私も、ああなるのか)
まるで、脳に浮かべられたこの光景は未来を見ているようで気分が悪くなり、作戦が終了したことを確認すると部屋を後にした。
適当な単発茶番()
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