アドリア海の出口に昔、政府軍が要塞化した島がある。大陸の方で起きた反乱が国中に波及、統率も取れない政府軍は民衆に敗北しいくつかの地域が落ちた。この島はその一つである。
《ボスーーにおけー反ーー、政府ー及ーー察の部ーーものーもーーー大を続けてーり市街ーでは厳ー令がー》
葡萄畑の角に雑把に置かれたラジオから、風でこすれる葡萄の葉に負けじと掠れた音声が流れている。戦争が始まってから管理されなくなった葡萄畑は今や対空兵器の隠し場所と化した。
「ミリェンコ、これいつのラジオ?」
銃座で寛ぎながら難しい顔で端末を眺める中年の男…、ミリェンコに訪ねた。
「んー?多分初期のやつじゃねぇかな。どこのラジオ局から流れてるかはしらんが、使えない情報ばっかだ。他の国のラジオでも入ってくれりゃ情報も入りそうだがな」
「なにそんな難しい顔して」
「あ?…いや、最近になって艦艇の通行が増え始めただけなんだが…」
《アドーアー隊は、ーーアーアー基ー奪ーーたーー府ー無断で艦ーをーかーーした。》
「ふーん」
彼から漏れ出した悩み事を聞き流し、芝生に横たわる。すぐ隣の大陸領は鉄と血の入り乱れる地獄だというのに、それを知ってか知らずか空は雲一つない青空、そよ風が気持ちいい。そのまま戦争を忘れたいところだが、手にはいつも冷たい銃が握られており一度意識してしまうと、すぐに現実に引き戻されてしまう。
「…、いつイベリアに行けるの?」
「…あと一ヶ月もすればここを放棄してイベリアへ行ける、もう少しの辛抱だな」
《艦ーー現ーーストリアーら南ーを続ースーリーー攻ーするー宣ーーてーーす。》
「へぇ」
ボットのようなフレーズに適当な返事を返す。
本当に無駄なことを聞いた、と一人で後悔した。
あらすじ
地中海連邦内戦期のシナノさんリメイクです。16?ぐらいの年齢の人間です()
リメイクの過程でヴィス島攻防戦の内容(戦力など)が変わる可能性は大きいです。(結果は変わりません())
イベリア
旧地中海連邦領イベリア。内戦中はバルカン半島領とは違い戦闘は少なくバルカン半島からイベリアへの移民船団、船団を襲撃する武装勢力が相次いだ。
ヴィス島
クロアチアの小さな島。沿岸部には、政府軍属時代にアドリア艦隊に対抗して要塞砲陣地が築かれた。