更に方便品第二では次のように続きます。
仏告舎利弗。諸仏如来。但教化菩薩。諸有所作。常為一事。唯以仏之知見。示悟衆生。舎利弗。如来。但以一仏乗故。為衆生説法。無有余乗。若二。若三。
【現代語訳】
仏、舎利弗に告げたまわく、諸仏如来は但菩薩を教化したもう。諸の所作あるは常に一事の為なり。唯仏の知見を以て衆生に示悟したまわんとなり。舎利弗、如来は但一仏乗を以ての故に、衆生の為に法を説きたもう。余乗の若しは二、若しは三あることなし。
舎利弗。我今亦復如是。知諸衆生。有種種欲。深心所著。随其本性。以種種因縁。譬喩言辞。方便力故。而為説法。舎利弗。如此皆為。得一仏乗。一切種智故。舎利弗。十方世界中。尚無二乗。何況有三。舎利弗。諸仏出於。五濁悪世。所謂劫濁。煩悩濁。衆生濁。見濁。命濁。如是。舎利弗。劫濁乱時。衆生垢重。慳貪嫉妬。成就諸不善根故。諸仏以方便力。於一仏乗。分別説三。
【現代語訳】
舎利弗よ、われも今、またかくの如し。諸の衆生に、種種の欲と深く心に著する所とあることを知りて、その本性に随って、種種の因縁と譬喩と言辞と方便力 ①とをもっての故に、しかも、ために法を説くなり。舎利弗よ、かくの如き(①のこと)は、皆、一仏乗の一切種智を得せしめんがための故なり。
舎利弗よ、十方世界の中には、なお二乗すらなし。何に況や、三あらんや。舎利弗よ、諸仏は、五濁の悪世に出でたもう。謂う所は、劫濁と煩悩濁と衆生濁と見濁と命濁との、かくの如きなり。 舎利弗よ、劫の濁乱の時には、衆生は垢重く、慳貪・嫉妬にして、諸の不善根を成就するが故に、諸仏は方便力をもって、一仏乗において分別して三と説きたもう。
お解かりでしょうか、声聞、縁覚。菩薩の三乗に開いて説いた教えは、一乗の仏の覚りを衆生に悟らせる為に用いた方便であるとお釈迦さまは言われております。